6月6日の続き。
要は、うち周辺のエリアがかなりガラが悪かったので、DJ.Tが、夜行性の猫たちを、夜間は家の中で保護してたいとのことだった。そして通りすがりの誰かが使用済みの注射器をうちの前に捨てていったその日から、犬たちもジャンキーに絡んで殺されたらいやだからと、やっぱり夜の間だけでも家の中に入れたい、とのことだった。今までも彼らは家の中を出入り自由だったけれど、犬たちはたいてい昼間は裏庭につながれていてDJ.Tの気が向いたときにだけ鎖をはずされていたし、猫たちも日柄入れ替えで出たり入ったり、そんなに頻繁に彼らを家の中で見かけることはなかったのだが、この日を境に夜の間は3人の人間と4匹の犬猫たちがみっちり入ったアニマルハウスへと変貌を遂げた。
そして犬猫たちの糞尿が家中のいたることころで見られるようになった。それに伴う強烈な悪臭、DJ.Tがこまめに掃除してくれるものの、さわやかな状態が1時間と持たない。そして猫たちはなぜか私の部屋で毎晩寝たがるようになり、やや猫アレルギーの私は、2匹の猫と一晩ともにして翌日、目と皮膚が腫れ上がったりしていた。犬たちは自分の縄張りでうんこできないせいか知らないが、くぅーんくぅーんと切なく夜通し鳴き続け、そのころちょうどエスタが発情期でアズを追い回し、あまりのエスタのうざったさに苛立ったアズは、誰かまわずシャーと牙をむきだすヒステリック猫になった。犬たちは猫たちのそんな一連の流れをぼんやりと見つめながら、隙あらば台所のゴミをあさり、台所の床はしょっちゅうゴミだらけ。夜出かけることができなくななったアズはどんどんデブになってゆき、そういえばエスタが食器棚の上から料理中の隙をねらうという技を覚えたのもちょうどこの頃だった。一軒家といえど40坪程しかなかった我が家が、さらに狭苦しくなってしまい、とにかくこれらもろもろの不都合があいまって、2週間程たって私ともくちゃんにとうとう限界がきた。
DJ.Tに最初は穏やかに談判。「こんな臭い家、安らかに暮らせないし、恥ずかしくって友達も呼べない」「動物たちを保護したいのも分かるけど、もう少し躾けてから」というのが私ともくちゃんの共通の意見で、「4匹の動物たちは俺の家族も同様。危険だと分かってる場所におちおち放しておけない」というのがDJ.T。お互い言いたいことは理解できるけど、だからといってよい解決策がすぐにはみつからず、「でも」「でも」と堂々巡り。
お互いの主張を通すだけ訴えるだけの会議で、あっさりと妙案を思いつくはずもなく、むしろそれが引き金となって、今まで積もりに積もった今回の件とはまったく関係のない別の鬱憤や不満がふつふつと頭をもたげ、会議自体が徐々にエスカレート。4匹のアニマルたちは険悪なムードをそうそうに察して、DJ.Tの部屋に仲良く避難。この日、3人で暮らすようになってから初めて大げんかが勃発した。「だいたいおまえが室内土足禁止にしたいっていうから従ったけど、本当は土足がよかった」から始まって「もくは料理してからすぐ調理器具を洗わないからみんな迷惑、ご飯食べる時間はみんな一緒なのに皿も朝まで置きっぱなし。一人暮らしじゃないんだから」とか「DJ.Tの週末前のDJ予行練習はうるさすぎる。あんなでっかいスピーカー(冷蔵庫サイズ×2)ほぼフルボリュームで、この前3件となりから苦情来た。普段はヘッドフォンしろっていってるのに聞かない」とか、「俺が言うまで誰も自分から家賃を俺にもってこない。なんで俺がわざわざ家賃催促しなきゃいけない毎週毎週、もうむかつく」とか「M川シャワーが毎回長すぎる。10分とは言わないけど20分程で終わってくれよ。朝なんてみんな立て込んでてトイレ我慢できない」とか「もくのひげ剃ったあと洗面台掃除してなくて髭カスだらけ。汚くて我慢できない」とか「DJ.Tが毎日ベッドシーツを洗うから、洗濯物干し場がいつも足りない」とか「だいたい犬用毛布を共同の洗濯機で洗うなよ、こっちの服まで毛だらけになるんだよ」とか「私以外誰も掃除当番の週になっても床掃除しない、決めたルールには従って欲しい、みんな大人だろ!」とか、まぁでるわでるわ、その日は明け方までテンションが上がりっぱなしだった。
「俺、会社行く時間」ともくちゃんが言って始めて窓の外が明るいことに気づいた。朝の7時だった。話し合いが始まったのが2時過ぎだったから、5時間近く言い争ってたことになる。DJ.Tが「疲れた」「コーヒーでも飲むか」と言ったので「じゃあ私が入れる」と台所へいって3人分入れた。3人向かい合って無言でコーヒーを飲む。みんな急にぐったりとしてそれ以上何も言わなかった。もっともみんな言いたいことは言い尽くしていたと思う。コーヒーを飲み終わったもくちゃんがもそもそと支度をはじめ「じゃあ行ってくる」といつも通り会社へ出かけ、その1時間後に私とDJ.Tがそれぞれの仕事場に向かった。
その日の夜、私はシャワーを短めに、もくちゃんは早々にお皿を洗い、DJ.Tは静かに音楽をかけていた。アニマル達は、夜間の間はDJ.Tの8畳間にしばらく捕獲することになり、生活に慣れてきた頃1匹ずつ部屋に放っていった。
それから1ヶ月程たった頃、もくちゃんはやっぱりお皿を朝まで洗い忘れてDJ.Tに怒鳴られていたり、私がシャワー中「はやく出ろーここで漏らすぞコラ」とドンドンうるさくノックされたり、練習中にノリにノったDJ.Tがヘッドホンをはずし踊りながら、私にうるさいと怒鳴られたり、以前の生活に戻ったが、髭カスは掃除されてるようになったし、家賃は自発的に持って行くようにはなったから、甲斐はあったと思う。今回一番迷惑を被ったのは犬猫達だと思う。
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